思索録

頭からこぼれ落ちてなくなってしまう前に。

生命の危機〜スペイン田舎編〜

人生には生命の危機が度々訪れる。

わたしも例に漏れず生命の危機にさらされながらここまで無事に生きているわけだけれど、こういう話って思い返すととても面白い。


ということで、死ぬかもしれなかったときの思い出をお話しますね。第一弾です。




あれは去年の2月、スペインのサラマンカに短期留学したとき。

ひとりでどこかの街を観光しようと思いたち、早朝、何も食べずに駅に走って電車に乗った。


高速鉄道で1時間半、セゴビアという街に着いた。

駅から中心地が遠いのでバスに乗ると、前に日本人のツアー客がいたので、後ろに何気ない顔でついていって話を聞いた。

ローマ時代の水道橋や白雪姫の城のモデルを見て、あぁ満足した。さて帰ろう。

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そのとき、わたしは思った。




バスじゃなくて歩いて駅まで行こう〜っと。バスでは15分くらいだったし余裕余裕!




…それが全ての始まりだった。

それを決意したのは昼頃だったけれど、水以外朝から何も摂取していない。
観光地だからどのお店も混んでいて面倒で。



さて、Google Mapで駅の名前を検索し、一番上に出てきた場所へ歩いていくことにした。

静かな公園や、スーパーマーケットのある通りを通り過ぎ、歩き、歩き、歩き、


なんか工業地帯に入り、人間という存在を1時間以上見ていないし、ていうか1時間以上歩いてるのっておかしい気がしてきて、



まあマップ合ってるし大丈夫よね。



などと考えつつGoogle Mapのピンの場所に着いた。





……とても大きな工場だった。日曜なので人は全くいない。


異国の地の辺鄙な工業地帯に存在する唯一の生命体であることに深く絶望しつつ、ウソだと思って見てみると、Google Mapが示していたのは駅と同じ名前の工場だった。


…では駅はどこだろう。同じ名前だから絶対近いでしょ!
ポジティブなので調べ直した。


7km離れていた。


しかもこの地帯、バスも何もない。タクシーも通っていない。

エネルギー不足だったわたしはちょっとおかしくなっていたのか、

「まあ歩ける!」

と思い込み方向転換を始めた。




…数時間後、ゲッソリとしたわたしの隣を、牛の群れがゆったりと歩いていた。


工場から駅に向かう道の途中からは、歩道という概念が存在していなかった。

獣道をかき分けて進み、脚が草で傷だらけになり、挙げ句の果てには牛の放牧地に迷い込んだ。

水が尽きたけれど、買えるような場所が全くない。


わたしはこのまま野垂れ死にするのかもしれない。

いざとなったらお隣の牛さんには犠牲になってもらおう。牛って生で食べたら死ぬっけ?


と思いつつ、ひたすら歩いた。
(※この時点で何も食べずに16時のため、思考能力が大幅に低下しています)



今考えると、誰にも会ってなかったら本気でおかしくなってたから牛さんファミリーが隣を歩いてくれてよかった。牛さんありがとう。


近くの牛に、
「やっぱりさ〜、寮の棚からパンくらいは拝借しておいた方がよかったよね〜」などと愚痴をこぼしながら30分。






駅。


地平線が見えるようなだだっ広い放牧地を歩いていたら、唐突に駅があった。




駅、放牧地と接してるのかよ。



という驚きは置いておいて、そのときは本当に泣きそうになった。

工業地帯って治安悪いイメージじゃないですか、運が悪かったら事件に巻き込まれてたよな。とか、赤い服着てたら牛に追突されてたかもな、など色々考えると恐ろしいよね。

ほぼ無傷で生きて帰れてよかった。

脚を傷つけた草は許さない。しばらくシャンプーがしみたんだよ。


高速鉄道が来るまで1時間あったので、駅ナカの小さいカフェに入った。

もう頭が働いていないので、適当にメニューを指さして頼んだら、地味なイチゴジャムのトーストとカフェオレが出てきた。

絶対自分の家で超熟食パンとか焼いたほうが美味しい、そのはずなのに、世界一美味しく感じた。

ぶっちゃけ涙が出てきた。


マックブックエアァという機械を軽やかに使いこなすお姉さんに変な目で見られつつ、トーストを1口50回くらい噛んで食べた。




ある意味貴重な経験をしたのだけれど、二度とごめんです。


この事件を機に、海外旅行の際はカロリーメイトの類と充分な水分、ポータブル充電器を持つようになった。


あと、できるだけ交通機関はケチらず使うようにしている。


今回わたしを苦しめたのはGoogle Mapでしたが、彼?がいなければ永遠にセゴビアを彷徨う幽霊として有名になっていたので、結果的には感謝しています。

ただ放牧地はルートに入れないでほしい。開発部の方、どうぞお願いします。

あと、みなさん検索には気をつけてね。



他に経験した生命の危機についてもそのうち書きたいと思ってます。



あなや。

駅を見つけて勝利の面持ちで撮った。
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いさ